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記事: Passing the baton : From Farm to Customer

Passing the baton : From Farm to Customer <Part2>

Passing the baton : From Farm to Customer

Part02 コーヒーへの「恩返し」井川鉄平(用賀店店長)

グアテマラでは「エル・コロリド」(自社ブランド豆)の収穫から生産処理までの「コーヒーづくり」の工程を体験して、ぼくたちが一杯のコーヒーに使っている豆のひと粒ひと粒が、生産者の方々の手仕事の結晶なのだということを強く実感しました。そして、次はグアテマラからエルサルバドルへ、ダイレクトトレードによる豆の買いつけに行きました。

ダイレクトトレードをはじめた2022年から、ぼくはバリスタとして焙煎された豆と向きあい、それらがもっているストーリーとともに「一杯のコーヒー」としてお客様に届けてきました。だからこそ、買いつけのために味を取るだけでなく、農園の方々のこだわりや想いをしっかりと伺い、知ることがぼくの役割だと思っていました。エルサルバドルの方々は、そうしたぼくらの投げかけに対してとても真摯に、包み隠さず答えてくれました。

 

大切な景色を、一緒に守る

前回コラムの冒頭で書いたように「コーヒーをお客様に飲んでいただき、海の向こうの農園に還元する」という「循環の輪」を大きくすることがコーヒーに対する「恩返し」だと、ぼくは思っています。

エルサルバドルに到着してすぐに向かったラス・ヴェンタナス農園とミレイディ農園では、初日にふさわしく、そうした「農園の方々の未来をサポートしたい」という想いが強まるような経験をしました。

ラス・ヴェンタナス農園では、農園主のエリサさんと彼女のお父さんが、おじいさんの代から続いている農園の歴史をお話ししてくださったあと、仕事終わりや休憩中にお父さんと行くという景色のいい場所に連れていってくれて「この景色を守りたい」と言ったんです。「お父さんとおじいちゃんと、みんなでやってきた農園のここは大事な場所だから」と。

ラス・ヴェンタナスは、昨年の収穫量が気候変動の影響で半分になってしまったそうなんです。もしかしたら率直に現実を教えてくれただけかもしれませんが、それを聞いたとき、グローバルに解決しなければいけない問題だからこそぼくらに伝えてくれたのかなとも思いました。お父さんも農園の歴史を話しているあいだ、おじいさんのことを思いだして涙ぐんでいて、ふたりとも自分たちの過ごしてきた土地でもある農園に強い思い入れをもっていることが伝わってきて、もらい泣きをしてしまいました。

ぼくらの仕事は現地に行って終わるわけではなく、彼らから買った豆で淹れたコーヒーをお客様にお出しすることです。遠く離れた日本にいてもエリサさんのご家族が大事にしている景色を一緒に守ることができるはずなんです。

また、ミレイディ農園の農園主のノレルヴィアさんは、なにかあるたびに冗談めかして「豆を買ってね」と繰り返していました。じっさい、そのとおりだと思います。なかなか言いづらいであろうことを、ぼくたちを信頼してそう言ってくださることはむしろ嬉しいことで、日々がんばらなきゃいけないなという気持ちを起こさせてくれました。

ミレイディ農園は、本誌の「Portrait of a barista」でも話したとおり(ISSUE14)、ぼくにとってもすごく思い入れの強い農園のひとつです。農園に到着したときにノレルヴィアさんが「新しい人がきたんだね、見ないとわからないことがあるからいろんな人がきたほうがいいよ」といって迎えてくれ、彼女に会えたことはもちろん、農園のことをもっと知ってほしい、伝えてほしいと思ってくださっているように感じたことも、すごく嬉しかったです。
ノレルヴィアさんの「豆を買ってね」というひとことは、ぼくの将来にずっと残りつづける、一生忘れられない言葉になりました。

 

農園との"つながり"

先日、トレス・ポソス農園のアルマンドさんとお客様がInstagram で直接つながってくれたということがありました。もちろんぼくらがお願いしたわけでもなく、自然に相互のやりとりが起こっていたんです。

トレス・ポソスはウッドベリーがダイレクトトレードをはじめた初年度から取り扱っており、ぼくらの愛してやまない農園のひとつです。直接お会いしたアルマンドさんは、大きくて愛嬌があって、すこしシャイなところもある方でした。ウッドベリーとのつながりの深さを感じたのは、生産処理の仕方について「ユウキ(同行した品質管理部の佐藤さん)がアドバイスをくれたから発酵は加えないことにしたんだ」とおっしゃっていたことです。そんな信頼関係を築けていることにも驚きましたが、それを素直に受け入れて、ぼくらのことを尊重してくれるアルマンドさんの人柄にも感服しました。

アルマンドさんとお客様の関係がつながったのも彼の人柄があってこそかもしれません。でも、ぼくはほかの農園さんにもお客様の喜ぶ姿をみせたいと思っています。ぼくらがそうだったように、じっさいに顔がみえるかどうかで農園さんの感じ方も大きく変わるはずです。お金の面だけでなく、コーヒーをめぐるさまざまな人の想いまでふくめて「循環の輪」を大きくしていきたいと思っています。

 

お客様に手渡せるもの

グアテマラとエルサルバドルから帰国して以降、ぼくは日々お店に立つなかで、生産者さんの熱のこもった表情が思い浮かぶようになり、彼らの想いを無駄にしてはいけないとより一層思うようになり、バックグラウンドのストーリーをお伝えすることの重要性を再確認しました。

というのも、現地に行くまでは味わいから逆算できることを話さないと体験としておもしろくないと思っていたんです。ぼくらが感じている味わいや、それにつながる特徴について説明することで「言われてみればそんな味がする」と思っていただけることを大事にしていました。

味わいが重要なのはいうまでもありませんが、じっさいに会って話した生産者さんの人柄やエピソードについても話せるようになったことで、彼/彼女たちのこだわりを感じてもらう方法はほかにもあると思うようになったんです。お客様にコーヒーを美味しいと思っていただくためのアプローチの仕方がガラッと変わったように感じています。

もうひとつぼくのなかで大きかったのは、コーヒーがずっと生活に寄り添ってくれるように、ぼくらが生涯ずっと美味しいコーヒーに出会いつづけられる環境をつくることも「恩返し」の目標に加わったことです。環境問題に直面している現地の姿をみて、地球がつながっているんだということを改めて実感したことは、それぐらい大きなことでした。

コーヒーのストーリーや環境問題についてお伝えするようになって、お客様の反応が目に見えて変わったわけではありませんが、それでもぜったいになにかが変わっていると思えます。「コーヒーを飲んでもらうことが生産者さんの未来につながっている」ということを伝えることで、なんの気なしに飲んでいるものが誰かの助けになっていることを知ってあたたかい気持ちを感じてくださるお客様もたくさんいらっしゃるはずです。「大切に飲ませていただきます」という言葉 をいただくこともありますし、話をきいて想像してくれるだけでも嬉しく思います。

今回のコラムでは、ラス・ヴェンタナス、ミレイディ、トレス・ポソスの三農園にしか触れられませんでしたが、ほかにもたとえば、ぼくと同い年のディエゴさんが経営するロス・ピリネオス農園で初めてグリーンカッピングをしたことや、生態系ごと農園の環境をつくる取り組みをしているブエナ・エスペランサ農園でアンドレスさんが話してくれたことなど、エルサルバドルで買いつけたひとつひとつのコーヒーには、いろんなストーリーや想いがこめられています。

ここで書ききれなかったことは、生産者の方々の顔を思い浮かべながら淹れた美味しいコーヒーと一緒にお話しできる機会に譲りたいと思いますので、ぜひお店に出会いにきてくださると嬉しいです。

オリジナルマガジン”Pneuma”ISSUE32より抜粋

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